ネタバレ注意!
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この記事にはSEGA社ATLUSによるゲーム『ペルソナ5 The Royal』に関する重大なネタバレが含まれています。未プレイで結末を知りたくない方スクロールしないように注意してください。
また,以下の記事内の和訳(意訳)や解説は私の感覚に基づくものであり,他の解釈も十分にあり得ることは承知しております。主語は俺→私の順になっていますが,性差について主張するものではありません(カウンターバランスを取ろうかとも考えましたが,あまりに読みづらくなるのでやめました)。なお,特定の曲の歌詞をテーマにしている以上,他の翻訳者の方々の記事と重複するような訳文や解釈が続いている可能性がありますが,剽窃の意図は全くございません。翻訳終了後に妥当性の検証のためいくつかの記事を見ましたが,その全ての内容,そして全ての記事を確認できているわけではありません。その点ご承知おきの上,御覧ください。
滅多に無いこととは思いますが,もしこの記事を引用される際には当ページのURLの記載をお願い申し上げます。私個人の解釈について,私の知らない場所で議論が起きても責任を負いきれないためです。ご協力お願い申し上げます。
初回投稿:2024年9月28日 0:40
更新(少々加筆) :2024年9月29日 12:30
(下にスクロールして記事にお進みください)
I believeという楽曲について(作曲:目黒将司・作詞:Lotus Juice・歌唱:Lyn)
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P5R最終盤に攻略する丸喜パレスでは,予告状を突きつけた後の最終潜入時に"Life will change"ではなくこの曲が流れます。この曲は"Life will change"のフレーズを挟みながらも,自身と向き合うことで決意を新たにした怪盗団のメンバーの心情が反映されているように思えます。自分たちの敵を打ち負かすという単純な構図ではなく,丸喜という「敵」がいながらも,どちらかと言えば「自分との戦い(丸喜の提示した「理想の世界」との葛藤)」を経て心が成長した怪盗団の曲と思うと胸が熱くなります。
it's time to
unveil the hype y'all been waiting for
お前の望む「理想の世界」を打ち壊す時が来た。
(unveil=覆いを取る=丸喜が現実世界に「被せて」きた「hype=誇大広告=理想の世界」を剥がす=壊す)
it's time to
bring an end to question of who will win? it's us
どっちが勝つのか,決着をつける時が来た。勝つのは俺達/私達だ。
I used to have bad feeling
premonition of falling short
俺/私はこれまで,お前の描いた理想の世界に抗えないのではないかと思っていた。
now I have no fear
since we're here
to fight it together
でも今は違う。もう何も怖くない。なぜなら,俺達/私達 怪盗団が一つになって,共に戦えるから。
I believe
we can fly up in the sky
俺/私は,俺達/私達ならどこまでだって行けると信じてる。
one day we may just
be able to touch down on a star
もしかしたら,いつか星にさえ手が届くんじゃないかとさえ思っている。
off the road we have to go
the roadless path we shall proceed until the end of our roles
たとえ険しい道なき道を進まなきゃいけないとしても,俺達/私達は役割をまっとうするまで進み続ける。
there's no turning back for us
cause we will never give up
もう俺達/私達が振り返ることはない。だって,もう決して諦めないから。
I thought that I told you I'm not a robot no
俺/私は,自分はロボットじゃないとお前に伝えたよな。
I thought I
told you I'm not a phantom I'm in your face
俺/私は,自分は幻影じゃないとお前に伝えたよな。現に,俺/私はいまお前の目の前にいて,お前と対峙しているだろう。
it's time to show
everything we got
to find a way out from this fake mirage
今こそ,俺達/私達が見つけた,この偽りの現実から抜け出す術を全て示すときだ。
our life is happening in front of you
right now
俺達/私達は,今まさに,お前の目の前で生きているんだ。人生を送っているんだ。
it's time to seize it
もうそれをわかったほうが良いんじゃないか?
I believe
we can fly up in the sky
俺/私は,俺達/私達ならどこまでだって行けると信じてる。
one day we may just
be able to touch down on a star
もしかしたら,いつか星にさえ手が届くんじゃないかとさえ思っている。
off the road we have to go
the roadless path we shall proceed until the end of our roles
たとえ険しい道なき道を進まなきゃいけないとしても,俺達/私達は役割をまっとうするまで進み続ける。
there's no turning back for us
cause we will never give up
もう俺達/私達が振り返ることはない。だって,もう決して諦めないから。
it's our turn
今度は俺達/私達の番だ。
to get back
to grab the future which we fully believe
俺達/私達が信じた未来を取り戻すんだ。
and it's not given to us
it's earned
誰かに与えられたのではない,俺達/私達が勝ち取ってきた未来を。
and I believe
we can fly up in the sky
one day we may just
be able to touch down on a star
off the road we have to go
the roadless path we shall proceed until the end of our roles
there's no turning back for us
because you know that
I believe
we can fly up in the sky
one day we may just
be able to touch down on a star
off the road we have to go
the roadless path we shall proceed until the end of our roles
there's no turning back for us
cause we will never give up
(繰り返しのため省略)
一貫して目立つのは,”I”という独白に続く文章が”we”で構成されている点です。
“I” believe “we” can fly up in the sky
という文章を例に取ると,主語は”I”なので各メンバーの独白に近い内容なのですが,それに続くのは”we”なので,我々,つまり怪盗団全員についてのことを語っています。「俺は/私は,俺達/私達 怪盗団なら,みんなと一緒なら,どこまででも行ける(空を飛べる,というのは比喩と解釈しましたが,「丸喜パレスの最後の階段を登っていく怪盗団」を思い浮かべると,あながち完全な比喩でもないかもしれません)」と各々のメンバーが確信しているということなのではないでしょうか。そして,そこには当然,明智も含まれているのではないでしょうか。この時点では,怪盗団の面々は明智も(当然芳澤も)含めて考えているでしょうし,明智もまたこう感じているということなのではないでしょうか。
個人的には,私は明智が嫌いです。プレイヤー=主人公として見事にハメられて散々な目に遭わされ,双葉や春の親を殺してきた明智を許すことは決して無いでしょう。不幸な身の上に同情し,情をかけようという気持ちも全くありません。確かに不幸な身の上だとは思いますが,決して犯してはならない罪を多く重ねた明智は,相応の罰を受けるべきかと思います。
ただ,丸喜パレスを攻略しているときの明智は,目標を一にする「心の怪盗団」の一員だったことに間違いありません。明智の罪さえ無いことになっていた「偽りの現実」に疑問を投げかけ,共にそれを打ち砕く決意を固めたのですから。一度死んだはずの親が生き返っているという偽りの現実を辛くも振り払った双葉,春,そして真までもが共に戦う決心をしてくれたという背景も考慮すると,この曲のフレーズを思い浮かべるたびに未だに目頭が熱くなります。
丸喜との戦いが終わった後,明智は再び消えました。実際には獅童パレスで死んでいたのでしょうから,もう戻ってくることはないと思われます。それも仕方ありません。しかし,もし生まれ変わったら,次は良い仲間になっているかもしれない。たとえ明智が嫌いでも,そう思わされることが何度かあったのもまた事実です。
P5Rクリア後に知ったことなのですが,明智とのコープがレベル10になった状態でエンディングを迎えると,エンディングムービーに,警察官とともに新幹線プラットフォームを歩いている明智が登場するようです。実際に映像を確認したところ,確かにそうなっています。では,コープが10になっている場合は,「明智が実は生きていた」という真のハッピーエンドということなのでしょうか。公式では「プレイヤーの判断に任せる」ということになっているようで,実際,多くのメディアでは「真エンド」という扱いになっているようでした。
これ以降は完全に個人的な意見であり,別の解釈も多分にあり得ると思いますが,私としてはこの場合でも明智が生きていたとは思いません(そもそも,明智が実は生きていてシャバをうろついているというのは私にとってはハッピーエンドではありません)。第一に,獅童パレスで一度死んだことがほぼ明示されているので,生き返るとは考えづらいということ。第二に,新幹線ホームに明智が現れるという世界線がおかしい気がするということ。獅童が捕まったならば明智も巻き込まれて逮捕されていて,シャバに出ている可能性は低いのではないでしょうか。そしてメタ的な読みをするならば,ムービー中で明智を見ているのはプレイヤーだけである点に注目したいです。プレイヤー視点では,主人公がスマホを確認している間に明智の幻影が外を通り,新幹線に乗り込んだ主人公が窓の外を見て,仮面を被るジョーカーの姿が浮かび上がったあとに新幹線が発車します。このとき,主人公は明智を見ていません。よって,この明智は「明智とのコープを10まで上げた,明智に思い入れのあるプレイヤーに見せよう」ということでエンディングムービーに挿入されたのではないでしょうか。現に,コープランクが4で終わってしまった私のように「明智に思い入れのないプレイヤー」には明智の姿は見えませんでした。明智とのコープランク次第で明智の生死がコロコロ変わる,というのは本作の「リアリティライン」(:物語に現実味を持たせるために最低限守られるライン,これを超えると「何でもあり」になってしまう)を考慮すると流石に考えづらいので(注:コープランク9程度で覚えるスキルで実は耐えていた,という説もあり,これなら一応の説明は付く?かもしれません),「いずれにせよ明智は死んでいる」というのが制作サイドの想定であると,おぼろげながら考えています。
もっとも,これでは「なぜ死んでいるはずの明智が見えたのか?」という疑問が生じます。それは,先述の通り「明智が見えていたのは明智とのコープが10になったプレイヤーだけ」ということを考慮すれば,明智の幻影が描かれたこと自体は作品のリアリティに影響を与えることは無いと言えるでしょう。繰り返す通り,作中には,確実にあの明智が見えていた登場人物はいないと思われます。つまり,「明智をもう一度見たい,生きていてほしい」と思っているプレイヤーへのサービス(としてプレイヤーの幻覚を可視化しておいた)である可能性が高いのではないでしょうか。当然,本当にそのような想定だったとしても,制作サイドがこれを公表することは決してありえないでしょう。そして,公表する必要は無いと思います。
ファンサービスにしてもおかしくないか?という意見もあるかもしれません。そういうときは,「奇跡も,魔法もあるんだよ」という言葉を思い出したいです。現実世界や,一定のリアリティを保って描かれる作品では,都合の良いことばかりが起きるわけではありません。何か良いことが起こりすぎた場合には,その分だけ悪いことが起きることが多く,作品を作るうえでも,主人公サイドに都合の良いことばかりを起こすというのはあり得ません。良いことばかりが起きるならば,ちょっと疑ったほうが良いかもしれないとさえ思われます。でも,見えないはずの仲間が見えた気がするとか,死んだはずの仲間の声が聞こえた気がするとか,そうでなくても多少上振れてうまくいくことがあるとか,ちょっとした「奇跡」なら起きるかもしれない。それを制作者としてプレイヤーに体験させてくれたのではないでしょうか。
いずれにせよ,私は明智が嫌いです。あいつは仲間じゃない。
ただ,近年のP5関連の商品には明智と芳澤がラインナップされていることが多く,ランダム商品を買うとだいたい明智が出ますし,明智が被ることが非常に多いです(真なら100個被っても良いのですが……)。なんで明智ばっかり出るんですかねえ。